運送業を始めるためには、最低限トラックドライバー5人、運行管理者1人を雇入れする必要があります。
このページでは、労働者を雇入れするための最低限のルールを解説しています。
運送業を経営するためには労働者を雇入れします。
その際に必要となる労働契約等にについて説明しています。
労働契約とは、当事者の一方(労働者:運転者、事務員等)が相手方(使用者:運送会社)に使用されて労働し、相手方がこれに対して賃金を支払うことを内容とする契約のことで、労働者及び使用者には、労働契約を遵守することが求められます。
労使対等 | 労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの |
均衡配慮 | 労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきもの |
仕事と生活の調和への配慮 | 労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきもの |
信義誠実 | 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない |
権利濫用の禁止 | 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない |
2024年度から労働条件の明示の制度のうち「すべての労働者に対する明示事項」が改正になります。
すべての労働契約の締結時と有期労働契約更新のタイミングごとに、
雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加えこれらの変更の範囲についても明示が必要になる。
例えば、運送業においては、運転者から運行管理などが考えられます。
倉庫業も行っている会社では商品管理業務もあると思います。
変更の範囲とは、将来の配置転換などによって替わり得る就業場所・業務の範囲を指す。
明示の対象 | 明示のタイミング | 新しく明示が追加される事項 |
---|---|---|
全労働者 | 全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新時 | 就業場所・業務の変更変更の範囲 |
有期契約労働者 | 有期労働契約の締結時と更新時時 | 更新上限の有無と内容 |
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約更新時 | 無期転換を申し込む事ができる旨 | |
無期転換後の労働条件 |
労働条件通知書(雇用契約書)は必ず作成しましょう。
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。※労働契約が締結され又は変更されて労働契約が継続している各場面が広く含まれる。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。安全配慮義務
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく変わる場面において、労働者及び使用者が話し合った上で、使用者が労働契約の内容を記載した書面を交付すること等が考えられるものです。
明示された労働条件が事実と相違していた時は労働者は直ちに解除ができる。
契約条件が労働基準法を下回る場合は、その部分については労働基準法が適用される
労働条件の変更について、労働条件の確認と労使間のトラブルを防止するため
新たな労働条件通知書を交付し、丁寧に説明することが重要です。
場面 | 条件 |
---|---|
出向 |
出向元と出向先との間で出向に関する契約等が結ばれていること。 |
懲戒 |
就業規則で懲戒規定が必要。 |
解雇 | 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、就業規則違反の労働契約に該当する場合を除き、この限りでない。
原則として使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益になる労働契約の内容である条件を変更することはできません。
ただし、以下の2点を満たす限り労働者の合意がなくても変更ができる。
使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額は「最低賃金法」で定められています。
毎年改定があるため確認が必要です。
なお、許可取得時の必要資金を算出する際もこの最低賃金を参考にします。
給与形態 | 比較方法 |
---|---|
時間給制の場合 |
時間給 ≧ 最低賃金額(時間額) |
日給制の場合 |
日給 ÷ 1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額) |
月給制の場合 |
月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額) |
出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合 |
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。 |
第二十七条 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとすること。
歩合給制度のうち累進歩合制度は廃止するものとすること。
実際に労働者を雇入れた後は、賃金の支払いが発生します。
賃金の支払には、労働基準法によるルールがありますので確認しておきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
通貨払い | 通貨払の原則は、貨幣経済の支配する社会において最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務付け、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり、弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じたものです。労働者の合意を得た場合はデジタル払い可。 |
直接払い |
中間搾取を排除し、労務の提供をなした労働者本人の手に賃金全額を帰属させるため、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものです。 |
全額払い | 賃金の一部を支払留保することによる労働者の足止めを封じるとともに、直接払の原則と相まって、労働の対価を残りなく労働者に帰属させるため、控除を禁止するものです。 |
毎月払い |
賃金支払期の間隔が開き過ぎることによる労働者の生活上の不安を除くことの目的。 |
一定期日払い | 支払日が不安定で間隔が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防ぐことを目的としています。毎月第4金曜日などはNG。 |
法定労働時間を超えて働かせる場合の割増賃金です。
時間外 | 割増率 |
---|---|
法定労働時間を超えて働かせた場合 | 25%以上増し |
法定休日に働かせた場合 | 35%以上増し |
午後10時から午後5時までの深夜に働かせた場合 | 25%以上増し |
1か月60時間を超える時間外労働 | 50%以上増し |
月給÷1年間における1か月平均の所定労働時間×割増率×残業時間(または深夜時間)
歩合給総額÷総労働時間×割増率×残業時間(または深夜時間)
歩合給にも割増賃金は必要です。
私の実体験ですが、労働基準監督署に指摘をされ2年間遡って支払った経験があります。
現在は、2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権の消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年とされています。なお、退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間などは変更されていません。
2020年4月1日以降に、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合、付加金※を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年とされています。
使用者が備え置かなければならない法定帳簿です
令和2年4月1日より、保存期間は5年とし、当分の間は3年となっています。
トラックの運転者の場合は、選考にあたり健康診断書、自動車運転免許証、運転記録証明書は重要です。
職務履歴書は、初任運転者として指導教育が必要なのか判断するため必要です。
整備管理者は、整備の経験を確認するため必要な場合があります。
事業者は、労働者に対し、労働安全衛生法などで定められた健康診断を実施しなければなりません。
一般健康診断に際しては、その後の結果に基づき健康診断個人票を作成し、医師等からの意見徴収などを行った上で5年間保存する必要があります。
雇入れ時の健康診断 | 常時使用する労働者を雇入れるときに実施※ |
---|---|
定期健康診断 | 常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的に実施 |
特定業務従事者の健康診断 | 深夜業、坑内労働等の業務に従事する労働者に対し、6カ月以内ごとに1回実施 |
海外派遣労働者の健康診断 | 6カ月以上海外に派遣する労働者に対し、派遣前および帰国後に実施 |
ストレスチェック | 恒常的に長時間労働や職場のストレスなど職場の就業環境をチェック |
※パートタイマー等についても1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上など一定の条件を満たせば実施が必要
疾病のおそれのある運行の業務とは、過去1年以内に法定の健康診断を受診させていない状態で運行の業務に従事させると行政処分の対象です。
未受診数 |
初違反 |
再違反 |
---|---|---|
未受診者1名 |
警告 |
10日車 |
未受診者2名 |
20日車 |
40日車 |
未受診者3名以上 |
40日車 |
80日車 |
未受診者による健康起因事故が発生したもの |
40日車 |
80日車 |
※健康起因事故とは、当該運転者が脳疾患、心臓疾患及び意識喪失を発症し、負傷者(当該運転者を除く。)が生じた重大事故等をいいます。
また、事業者が、当該運転者の事故発生日から過去1年以内に法定の健康診断を受診させずに運行の業務に従事させていた場合、又は、健康診断受診結果に基づき、脳疾患、心臓疾患及び意識喪失に関する疾病を疑い、要再検査や要精密検査、要治療の所見があるにもかかわらず、再検査を受診させずに運行の業務に従事させていた場合のいずれかに該当した場合に適用されます。
パートタイム・有期雇用労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)
1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者(下記参照)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者をいいます。
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます。
例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、パートタイム・有期雇用労働法の対象となります。
同一労働同一賃金とは、同一の事業主に雇用される通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の相違及び差別的取扱いの解消を目指すものです。
1.基本給
通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者ともに能力、経験、業績、成果、勤続年数等の決定要素が適用されている場合、適用されている決定要素(例えば能力)に応じた基本給部分(例えば能力で決まる職能給部分)については、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者でその決定要素(例えば能力)が同じ場合には同一の、一定の違いがある場合にはその違いに応じた基本給を支給しなければなりません。
2.賞与
通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者ともに企業の業績等への労働者の貢献に応じて支給される場合には、貢献に応じて支給される部分については、通常の労働者と同一の貢献であるパートタイム・有期雇用労働者には通常の労働者と同一の支給を、貢献に一定の違いがある場合にはその違いに応じた支給をしなければなりません。
3.手当
不合理な待遇差の解消は、企業が支給している全ての手当が対象となります。不合理な待遇差であるかは手当の性質・目的に照らして適切な考慮要素に基づいて判断されます。
・役職手当(役職の内容に対して支給)
・特殊作業手当(業務の危険度又は作業環境に応じて支給)
・特殊勤務手当(交替制勤務等の勤務形態に応じて支給)
・精皆勤手当
・時間外労働に対して支給される手当
・深夜労働又は休日労働に対して支給される手当
・通勤手当及び出張旅費
・食事手当(労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給)
・単身赴任手当
・地域手当(特定の地域で働く労働者に対する補償として支給)
運送会社において裁判が行われ、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当、精勤手当など不合理とされた
4.福利厚生
手当と同様に、不合理な待遇差の解消は、その企業が付与している全ての福利厚生が対象となります。
・福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)
・転勤者用社宅
・慶弔休暇
・健康診断に伴う勤務免除及び当該健康診断を勤務時間中に受診する場合の当該受診時間に係る給与の保障
・病気休職
・法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているもの
5.その他
教育訓練並びに安全管理に関する措置及び給付も不合理な待遇差の解消の対象となります。
職務の内容例
正社員 | 短時間・有期雇用労働者 | 判断 |
---|---|---|
運転業務 |
運送業務 |
異なる |
運転業務 |
運転業務
|
異なる |
倉庫業務 |
倉庫業務 |
同じ |
〃 本社への配置転換あり |
〃 配置換えなし |
異なる 職種を超えた配置転換があるため、職務内容及び配置の変更の範囲が異なる |
労働者とは職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者(第9条)
職場における労働条件の最低基準を定めることを目的とするため、労働基準法が定める労働条件による保護を受ける対象を確定するための概念と解される。
労働安全衛生法、最低賃金法における労働者は、労働基準法に規定する労働者をいうと定義。労働者災害補償保険法は労働者の定義を置いていないが、法律の目的・趣旨等から、労働基準法上の労働者を指すと解される。
下記の 1・2を総合的に勘案することで、個別具体的に判断する。
(1)指揮監督下の労働
①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
②業務遂行上の指揮監督の有無
③拘束性の有無
④代替性の有無
(2)報酬の労務対償性
(1)事業者性の有無
①機械、器具の負担関係、②報酬の額
(2)専属性の程度
(3)その他
横浜南労基署長事件(平成8年11月28日最高裁)
自己所有のトラックを、持ち込み会社の指示に従って製品等の輸送に従事していた運転手(傭車運転手)が、災害を被ったことにつき労働者災害補償保険法上の労働者であるとして労災保険給付を請求した事例
(運送会社は)運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がA株式会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない。
報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。
労働者ではない場合、ドライバーの選任基準からも逸脱したナンバー貸しになることも
雇用・労災加入 | 健康・社保加入 | 所得税の源泉徴収 | 車両管理費の負担 |
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愛知県、岐阜県、三重県、静岡県。名古屋市、北名古屋市、清須市、豊山町、稲沢市、春日井市、小牧市、一宮市、江南市、犬山市、大口町、扶桑町、岩倉市、津島市、愛西市、蟹江町、弥富市、瀬戸市、日進市、三好市の事務所近郊の尾張から、知多市、半田市、大府市、常滑市の知多方面、豊田市、岡崎市、安城市、刈谷市、豊明市、西尾市、知立市の西三河から豊橋市、豊川市、田原市の東三河まで愛知県全域、岐阜県(岐阜市、大垣市、美濃加茂市、各務原市、可児市、多治見市、土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市、加茂郡など西濃、東濃)、三重県(桑名市、鈴鹿市、四日市市)の東海三県。浜松市、湖西市。その他可能な限り中部運輸局管轄を対応させていただきます。
関東運輸局、近畿運輸局、広島運輸局管内の対応実績有り。
全国:北海道、青森、岩手、宮城、福島、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、長野、山梨、静岡、愛知、岐阜、新潟、富山、石川、福井、滋賀、京都、大阪、奈良、三重、和歌山、兵庫、岡山、広島、山口、島根、鳥取、香川、愛媛、高知、徳島、福岡、大分、宮崎、鹿児島、熊本、佐賀、長崎、沖縄